水いぼについての考え方
〜水いぼとプールに関する見解〜

毎年、プール活動を前にした時期になると「みずいぼ」についての相談に受診される方が増えてきます。
みずいぼの対処法については、以前より議論のあるところで医師の間でも方針が一定していないのが現状です。医療機関によって一定していないわけですから、ましてや一般の保護者の方や幼稚園・保育園においては、混乱が生じていてもやむを得ない感があります。
私が園医を務めている保育所においても、その対処法をめぐって混乱していたことから相談を受けたことがあります。その際、下記に示すような文書をリーフレットとして、保護者に配布して意識統一を図りました。みずいぼについて疑問のある方については、これが参考になれば幸いです。
要点としては
みずいぼに対する絶対的な「治療」方針はない。
単に水いぼがあるという理由で、プール活動を制限すべきではない。
と、述べることができます。
以下、平成16年に○○保育所園児の保護者に配布した書面を一部改編したものをお示しします。
水いぼの特徴・経過
水疱の表面に接触しただけでは感染しません
水いぼとは正式には伝染性軟属腫と呼ばれ、ポックスウイルスの感染によるもので、直径1~5mm程度の丸く堅い水疱状の病変がみられます。 これは身体のあらゆる部分に出現しますが、特にわきの下や肘、首筋、膝の裏など擦れやすく触りやすい部位において拡がりやすい傾向があります。
この水疱の中にあるウイルスが、人に直接、あるいは間接的に接触することによって感染するもので、水疱の表面に接触しただけでは感染しません。
このウイルスは弱いもので、健康な身体に対する害はありません。
ただ、弱いがゆえに免疫反応が起きにくく(抗体ができにくく)、自然に治癒するまでには数か月~1、2年を要します。
(約95%の人は、発症後1年以内に治癒するといわれています)
病変の拡がり方は人によって様々で2、3個のみの場合もあれば、特定の部位に十数個固まって出現したり、全身に多数みられる場合もあります。
これは、その人の抵抗力や皮膚の状態によって異なってきますので、それぞれが必要に応じて以下の治療の要否を検討してください。
水いぼの治療について
原則として無治療・無処置でよい。
以上のように、みずいぼは、
身体にとって無害であること、
抵抗力ができるのに時間を要するため治療したつもりでも再燃の可能性があること、
などから、原則として 無治療・無処置でよいと考えられます。
ただし、アトピー性皮膚炎などによる乾燥肌傾向の強い方は、皮膚からウイルスが侵入しやすく、手で掻くことによって 病変を拡げてしまいやすいため、そうならないうちに早めに乾燥肌に対するスキンケアを十分に行うようにしましょう。
水いぼそのものの治療については、一つ一つピンセットで除去するのが最も一般的です。
それ以外にも、硝酸銀ペーストで灼いたり、スピール膏を貼り付けて灼く、などいくつかの方法が挙げられます。
それぞれ一長一短がありますので詳しくは医療機関でお尋ねください。
プールでの保育活動について
水いぼがあるからといって
プールでの活動を制限する必要はまったくありません。
水いぼの伝染はあくまで接触感染によるものであり、プールの水を介して伝染するというデータはなく、プールでの活動と部屋で薄着で遊んでいるのとで感染機会に大差はありません。また、学校保健安全法においても、この疾患は「隔離など特別な措置は不要な疾患」と位置付けられており、単に水いぼを有するといった理由のみで活動に制限を加えることは、極めて不適切な対応であるといえます。
ただ、プールから上がってタオルを共有することは間接的な接触につながりますので避けるようにしましょう。
○○保育所 園医 上原久和
